なぜ .lg.jp ドメインは普及しないのか
- 高木浩光@自宅の日記 - 信頼あるドメイン名の意義を軽視する地方自治体の愚行
- 自治体サイトのURL、本当にそれで大丈夫? 詐欺に悪用される危険も... - ニュース - Jタウンネット 東京都
- http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/ronten/111700021/
よくこのような話題が挙がるが、なぜ .lg.jp という専用の属性が割り当てられているにも関われず、地方自治体が運営する (観光情報のような) ウェブサイトではこれが普及しないのか。
その理由は単純明快で「.lg.jp の使用は敷居が高い」のだ。具体的には、
という制約がある。以下で詳しく説明していく。
.lg.jp ドメインの種類について
まず .lg.jp ドメインには、大きく分けて次の2種類がある。
【理由その1】.lg.jp ドメインでは自由な名称が取得できない
「地方公共団体ドメイン名」については、先に述べた通り取得できるのは一自治体につき一つなので、新たに取得を検討する余地はない。既存のサイトとは別ドメインで新たなサイトを開設したい場合、サブドメインを使うことになる。例えば、京都市の観光情報サイトでは「kanko.city.kyoto.lg.jp」という「city.kyoto.lg.jp」のサブドメインが使われている。
〈行政サービス用ラベル〉.LG.JP
となっていて、〈行政サービス用ラベル〉の部分は「LGWAN 運営協議会が決定」することになっている。行政サービス用ドメイン名に係る行政サービス用ラベル技術細則 (PDF) によると、行政サービス用ラベルは
行政サービスの名称をヘボン式ローマ字に直した文字若しくはその一部によって構成されるラベル、又は当該行政サービスを平易かつ簡潔に表す文字列によって構成されるラベルとする
とされている。実際この部分が完全に一方的に決められるのか、ある程度交渉の余地があるのかは知らないが、いずれにせよ自由な名称のドメイン名を取得することはできない。
【理由その2】(LGWAN につながないと) .lg.jp ドメインどうしでメールを送受信できない
LGWAN を経由した電子メールの仕組みについて (PDF) を見てわかる通り、.lg.jp ドメインどうしでメールを送受信する場合、必ず LGWAN を経由しなければならないことになっている。
つまり「地方公共団体ドメイン名」のサブドメインにしても、「行政サービス用ドメイン名」にしても、適当なホスティングサービス (いわゆるレンタルサーバ) を契約してメールを受信するようなことはできない。(MX レコードを書けば .lg.jp 以外のドメインからのメールは受け取れるだろうけども)
それどころか、行政サービス用ドメイン名について(2/2) (PDF) を見ると、次のように書かれている。
行政サービス用ドメイン名は、インターネット上で提供される行政サービスを登録対象としているため、行政サービス用ドメイン名のメールアカウントでは、LGWAN参加団体からのメールを受信することができません。このため、行政サービスに関するメールについては、行政サービス用ドメイン名以外のドメイン名で運用するなどの対応を取る必要があります。
このように、.lg.jp ドメインではメールを実質運用できない。
【おまけ】 .go.jp ドメインはどうなのか
政府ドメインリストによると、.go.jp ドメインは平成28年4月1日時点で300以上登録され、活用されている。
なお、以前は地方自治体でも .go.jp ドメインを登録できたようだ。例えば和歌山県は「wakayama.go.jp」を使っていたし、神奈川県産業技術センターは「kanagawa-iri.go.jp」を今でも使っている。恐らく .lg.jp が制定されたことにより新規登録ができなくなったのだろうから、むしろ事態は悪化したのではなかろうか。
参考文献
- LG.JP ドメイン名について (PDF)
- 政府 Web サイトのドメイン運用に関する見直し要領等について (PDF)